著者は昭和三十年までの三十数年間、治療活動を行なってきたが、本書は、彼の治療家としての到達点を示したものである。「治療といふこと いつも人の体の自然の働きによらざる可からず。護る二と庇ふこと出来て、鍛へしむること突き放すこと出来ざるは彼をして独り立たしめざる也。治療のこと 人を強くする為に導く也。時に突き放し、背くこと必要也。……治療を行ふは自然也。人が人を治すに非ず。人はその在る、あるに在る也。その在る、あるに在らしむこと治療といふ也。わが治療といふこと、斯くの如き也」。本書を認ためて数年ののち、治療を捨て、新境地である体癖修正を中心とした整体活動を始めるが、著者の転回期を理解する上で不可欠の書と言える。本書捨てて省りみないと著者は言うが、本省から、整体指導や教育や医学の真髄を読みとることは容易であろう。生命に触れる者の持つべき〈慎しみの哲学〉は単に著者個人の信念の書ではない。